こんにちは、北海道大学の大学院でAIの研究をしているヒグマです。 

高専寮のリアルを語る連載、第3回はいよいよ「寮のご飯」についてお話しします。

寮のご飯がつらい理由は2つある

前回、「寮の飯はおいしいとは言えなかった(だからスーパーの鴨肉と白ご飯が最高の贅沢だった)」と書きました。

ただ、5年間食べ続けた者として正確に言っておきたいことがあります。

寮のご飯がつらかった理由は、実は2つあるんです。

1つ目は「お米」。 

私は母親の料理がうまい家で育ち、自分でも料理をします。

そしてなにより祖父母が作る米がうますぎました。

そのせいで基準が上がっていた面はあると思います。が、寮の米は周りからも普通に不評でした。

2つ目が本題で「おいしいものを食べられなくする仕組み」です。 

おかず自体は、おいしいものも結構あったんです。それなのに寮特有の仕組みが、それを口に入る前に台無しにしていく。

朝・昼・夜、順番に説明していきます。

朝:低学年に菓子パンは残っていない

朝食は7:30〜8:00。

 メニューは二択で「菓子パン+牛乳(またはコーヒー牛乳)」か「納豆や鯖などの定食」を選べます。

……選べる、というのはあくまで建前です。

食堂の列には暗黙のルールがあって当然のように高学年から並びます。

低学年は、その後ろでバタバタと並ぶことになります。

すると、どうなるか。

 低学年の順番が来る頃には、菓子パンは跡形もなく消えています。

おかずの鯖の塩焼きも消えています。残っているのは納豆と冷奴とふりかけのみ。

それはもう定食ではありません。

「ただ白米を食う会」ですねw

メニューが悪いのではないんです。菓子パンも鯖も、ちゃんと存在はしている。低学年の口に入らない仕組みになっているだけで。

ちなみに牛乳は微妙に冷えていませんでした。表現が難しいのですが、少しぬるいんです。

お腹が緩い人は、そっと牛乳を避けていたのを今でも覚えています。

昼ごはん:早歩きと、汁に浮く米【米の問題】

昼は丼系魚フライなどの定食がメインでした。

午前中の授業が終わると寮生たちは一斉に食堂へ「早歩き」で向かいます。走りはしません。でも猛烈な早歩きです。

 理由は単純で、出遅れると長蛇の列に並ぶことになり容赦ない暑さの中、外で待つのは地獄だからです。

ここで丼メニューについて5年間で得た知見を共有させてください。

「汁気が多い丼」は危険です。

たとえば牛丼

具と米が一つの丼に入っていて汁がたっぷりかかっていますよね。

この「パサパサの米」がさらさらの汁の中にフワッと浮くんです。正直これだけは何を意図して作ったんだろうと思っていました。

一方で、焼肉丼や中華丼はおいしかったです。丼じゃない日のおかずも普通においしい。 

つまり、米の存在感が薄いメニューほど当たりになる。すべてはとの相性にかかっていたんですね。

なお、出遅れて昼休みが削れそうな日は諦めて近くのコンビニに走っていました。(ほんとに時々)

夜ごはん:部活を頑張るほどメシが過酷になるシステム【仕組みの問題】

そして夕食。ここに最大の「構造的な問題」が潜んでいます。

夕食は18:00スタート。メニューは「A食・B食」の2種類から好きな方を選ぶ方式です。 

まず帰宅部が18:00に食堂へ来て先に食べます。当然、AとBのうち「おいしいほう」から消えていきます。

部活勢がヘトヘトになって食堂に着くのは、19:30頃。
その時点で人気メニューはすでに売り切れ。

残った不人気なほうを食べるしかありません。

さらに追い打ちがあります。
19:30の飯は、当然できたてではありません。

仕方ないことですが、鶏むねや豚肉の料理は時間が経つと水分が抜け、尋常じゃなく固くなります。
完全にゴム肉です。

 できたてで食べれば、うまかったはずなのに……。

ここで思い出してほしいんです。おかず自体は悪くないと書きました。 このゴム肉も、できたてで食べればうまかったはずなんです。 おかずを殺しているのは、時間と順番。つまり仕組みなんです。

つまり、こういうことです。
部活を頑張れば頑張るほど、ご飯のクオリティが下がっていく。

部活を頑張れば頑張るほど、ご飯のクオリティが下がっていく。 厳しい練習を終えて食堂にたどり着いた者を待っているのは、売れ残りのメニューと、冷めて硬化したゴム肉なんです

唐揚げとロールキャベツの絶望

この残酷な構造が、最悪の形で現れる日がありました。

「A食が唐揚げ」の日です。

唐揚げは超絶当たりメニューなので、帰宅部によって光の速さで消滅します。

そして、その日のB食が「ロールキャベツ(キャベツ8肉2)」だったとき。

19:30食堂に着いた部活勢に残されているのは、ロールキャベツのみ。 ……絶望です。

※なお公平のために書いておくと、ロールキャベツ(キャベツ8:肉2)だけは仕組み関係なく、できたてでも厳しかったと思います。5年間で唯一の例外です。

逆に美味しかったメニューも書いておきます。

一番はおそらく肉じゃが。カレーもめちゃくちゃうまかった。

お気づきでしょうか。 どちらも「煮込み系」なんです。 煮込み料理は時間が経っても劣化しません。 むしろ味が染みておいしくなる。 煮込み料理だけは、帰宅部にも部活勢にも平等なのです。

それでもご飯をおかわりはしていた

散々文句を書いてきましたが、最後に白状しておきます。

米はパサパサ。仕組みは残酷。 でも部活終わりの体は、限界までお腹が空いてるんです。

だから私は、その微妙なコンディションの米を、腹がパンパンになるまで何杯もおかわりしていました。

「今日のメシ、外れだなぁ」と語らいながら、結局ドカ食いしている16歳。 青春とは案外そういうものかもしれません。

今思うと一食200円程度ではありがたかったなとも思わなくもなくもないですね。

次回は「寮生活のお風呂の話」にしようと思います。 風呂に裸の行列ができる話と、化学科が風呂の菌を調べたら「飲んだら腹を壊す」と言い放った話です。お楽しみに!

(つづく)