前回の「全裸行列風呂」を読んで、高専寮のサバイバル具合にドン引きしている方も多いかもしれません。

こんにちは!高専卒を出て北海道大学の大学院でAIの研究をしているヒグマです🐻



第5回は「寮生の一日」についてお話しします。

ゴム肉の夕食、激戦の風呂ときて今回はそれらを繋ぐ「時間割」のお話。


先に結論を言っておきます。無法地帯に見える高専寮ですが、寮生の一日は皆さんが思っているよりもかなり管理されています。

これが寮生のリアル!怒涛の「一日タイムライン」

まずは、平日のタイムラインの全体像をご覧ください。

時刻毎日のスケジュール
07:20朝の点呼(極寒の外に集合)
07:30ラジオ体操※下級生のみ
07:30〜朝ご飯
日中授業 → 昼ご飯早歩き → 部活
18:00〜夕ご飯
17:30〜風呂
20:30夜の点呼
20:45〜掃除
21:00〜静粛時間(強制自習:2時間)
23:00〜寝る準備
23:20就寝( ´∀` )

起きてから寝るまで、息を抜く暇がないほど行動がガチガチに決まっています。

順番に、そのカオスな中身を解説していきましょう。


朝07:20、極寒の屋外に強制集合


寮生の朝は、全員が外に集合しての「点呼」から始まります。


雨の日は室内に変更されますが、冬の寒い日でも普通に外です。

朝7時20分の屋外は容赦なく寒い。眠気なんて強制的に吹き飛びます。


ちなみに、寝坊してこの点呼に遅れると「ポイント」が付きます。

しかも一発で結構重いやつです。


……この「ポイント」が何なのかは次回たっぷり説明しますが先に一言だけ言っておくと、溜まると寮を退寮になります。


点呼が終わると07:30からはみんな大好きラジオ体操の時間が始まります。


ただし、これは「低学年だけ」であり高学年は免除されて悠々と部屋に戻っていきます。

ご飯や風呂の設備も学年で扱いが違いましたが、なんと朝の体操まで格差社会でした。


なおこの点呼やラジオ体操を仕切っているのは先生ではありません。

「寮生会」という学生による自治組織です。


指導寮生、階長、棟長、寮長といった役職者で構成される、いわば寮の絶対的運営チーム。

実は私も5年かけてこの組織の階段を登っていくことになるのですが……そのディープな話は、また別の回で反したいと思います。


体操が終わったら急いで朝ご飯をかき込んで学校へ向かいます。


通学時間ほぼゼロの「徒歩3分」は、寮生活の数少ない、そして最大の特権です。


夜20:30、ホテルの避難訓練のごとき整列


日中の授業と部活をこなし、夕ご飯を食べ風呂の全裸行列を乗り越えると、20:30に「夜の点呼」が行われます。


朝と違って、夜は自分の部屋の前に立って待つスタイルです。


長い廊下の両サイドに男子寮生がズラッと直立不動で並ぶ様子はなかなかシュールな光景です。


点呼が終わると、そのまま15分間の「掃除タイム」に突入します。


掃除は週替わりの当番制で、洗濯機まわり、廊下、トイレ、風呂などの共用部を分担します。


そして、この当番の中に、ひとつだけ明確な「ハズレの貧乏くじ」が存在します。 それが風呂掃除です。


前回お話しした大浴槽2つ。


あれのお湯を全部抜いて洗うのですが排水口から抜けるのを待っていたら15分では到底終わりません。

では、どうするのか。

バケツを使って、人力で汲み出します。

複数人がかりで、ひたすらバケツでお湯を汲んでは捨てる、汲んでは捨てるの無限ループ。腰が悲鳴をあげ始めます


しかも彼らが必死に汲み出しているのは化学科が「飲んだら腹を壊す」と判定したお湯のバケツリレーです。


21:00〜23:00 お勉強タイム


ドタバタの掃除が終わると、先ほどの喧騒が嘘のように寮全体が静まり返ります。


「静粛時間」の始まりです。


21:00から23:00までの2時間、寮生は必ず自分の部屋で勉強しなければなりません。


「することになっている」という生ぬるいルールではありません。「絶対にさせられる」のです。


なぜなら、先生が抜き打ちで見回りに来るからです。


勉強以外のことをしていると普通に怒られますし、スマホやゲームを触っているのがバレると、即座に退寮リーチの「ポイント」が加算されます。


つまり寮生は、毎日2時間の勉強時間を強制的に確保させられているわけです。


以前も書きましたがこの静粛時間にちゃんと机に向かっていれば、高専のテストで赤点を取ることはまずありません(※個人差あり)。


私自身も集中できる時間があり助かったと記憶しています。


テスト前に慌てない学習体質は間違いなくこの「強制2時間」が作ってくれました。


静粛時間が明けた23:00〜23:20は、息抜きの「生活タイム」。


静粛時間の前に仕掛けておいた洗濯機からダッシュで洗濯物を取り出して干し急いで歯を磨きます。


寮生たちは皆このわずか20分間に自分の生活リズムを完璧に最適化していました。


23:20、消灯。……公式上は。

そして23:20、ついに消灯時間です。

寮生は部屋の電気を消して、静かに眠りにつきます。

——公式上は。


実態はどうだったかというと消灯時間を過ぎた途端、持ち込み禁止のはずのゲーム機がどこからともなく錬成され、誰かの部屋に人が集まり、だいたい深夜2時頃まで白熱のバトルを繰り広げている寮生が一定数いました。


でも、考えてみれば当然なんです。


朝7:20から夜23:20まで点呼、体操、掃除、強制自習と、息つく暇もなく管理され続けた一日の中で、「消灯後」だけが彼らに残された唯一の完全な自由時間なんです。


徹底管理が生んだ、闇の自由時間。


この消灯後のアンダーグラウンドで一体何が行われていたかは、いずれ「寮の裏娯楽」の回でじっくり語り尽くそうと思います。

次回予告

次回は、今回チラチラと存在を匂わせた恐怖の制度、「寮則ポイント」のお話です。

窓の閉め忘れ、充電器をコンセントに挿したまま外出、点呼の遅刻……。

あらゆる些細な違反がポイント化され一定数溜まると「即・退寮」。

寮生活の緊張感と秩序の源泉であるシビアすぎるシステムについて書きたいと思います。お楽しみに!

(つづく)